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スティーブン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』

 バージェス頁岩で発掘されたカンブリア紀の奇妙な生物をめぐる研究がもたらした進化観の大幅な見直しが本書のテーマ。ただしまえがきで触れられているように、大きなテーマよりも細部に注目したい。

 そして空想するのだ。5億年前の世界はどんなだったろう?

 当時の奇妙な生物の跋扈する世界を傍観者として想像の目で覗くのは愉快なものだ。それと同様に5億年後の生物も「当時はホモ・サピエンスとかいう奇妙な生物が大量にのさばってあれこれ変てこなものを作り出していた不可思議な時代だった」という具合に空想するのだろうなあと考えるのもまた愉快なものである。

 進化観の大幅な見直しを迫られたバージェス生物群の研究の経緯を追う3章が、新しい発見に伴う研究チームの動揺と興奮が伝わってくるドラマチックな内容となっていて少し感動した。ただしグールド自身はその研究に参加していない。研究の成果を根拠に自説を書いているだけの立場だ。それなのに研究の流れや研究者の人間性にまで筆が及んでいるのは、彼自身その研究や発見に感動を覚えたからなのだろう。

 グールドは悲運多数死という説で従来の考え方をひっくり返す。「優れているから生き残るのではなく、自然淘汰の結果は偶然に左右されるものである。決められた進化の道を歩んで人類にまでたどり着くのではない。人類が生まれたのも偶然である。」。要約するとこういう主張だ。

 この論の好きなところは、人類が他の生物と同じレベルにまで地位を落とされるところだ。尊大な人類は自分たちのことを特別な生物だと考えがちである。自分にとっては確かに特別だろうけれど、一歩引いた目で見るならば他の生物と同条件であって何ら特別なわけではないのだ。ホモ・サピエンスも自然環境の変化で容易く絶滅してしまうだろう。アノマロカリスだって恐竜だって自分たちが絶滅するなんて考えなかったはずだ(考えられるだけの知能があるとかないとかの話ではなく)。

 最近ではカンブリア爆発自体なかったのではないかという話になっているようなので、それを下敷きに展開しているグールドの説もまた修正されるのだろう。

 ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 感想 スティーヴン・ジェイ グールド - 読書メーター

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

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