第一夜
現状
こないだ明晰夢を見るって書いてから全く夢を思い出せなくなってしまった。おそらく生活リズムが乱れているせいだろうと思う。ここ最近は就寝時間が遅くなり、それによって睡眠時間が短くなっていた。
夢を見ているのは、眼球が急速に動いているレム睡眠という状態のときらしいが、睡眠時間が長ければ長いほどその時間も長くなるので、夢(もちろん明晰夢含む)を見ようと思ったら睡眠時間は多めに確保しておいた方が良いのだ。
それを意識していたわけではないけれど、昨日と今日はたくさん眠った。そのおかげかほぼ一週間ぶりくらいで夢を思い出すことに成功した。
以下はその夢である。
夢
どうやら家族と一緒に車で買い物に来たようだ。運転はおそらく父親で車はぼくのものではない。全国展開しているインテリアショップで大きめの店舗だ。インテリアショップと思っていたものの、入ってすぐ左手にカジュアルな洋服のお店があった。数着選び、レジへ持っていくとくじを引かされた。「あたりです! もう一回!」という威勢の良い店員に声におされて合計三回くじを引いた。三回とも当たったようなのだけれど、景品はなぜかギターが一つだけだった。
それを不思議とも思わずにわくわくして待っていると、店員のおじさんが持ってきてくれた。嬉しくなってそれを見ているとどうも弦が三本しかない。顔を上げるとすでにそこは大型インテリアショップのレジではなく、薄暗い楽器店になっていた。
「これはヴァイオリンではないの?」
「そう、ヴァイオリンだ」
それならそれでもいいかと思って音を出してみたら、経験もないのに思い通りの音が鳴って満足した。ふと右手に何も持っていないことに気がついて、ヴァイオリンって弓を使って弾くものではなかったかとおじさんに訊いてみた。
「ああ、でもこれでも弾けるんだよ」
おじさんはギターのピックをわたしてくれた。それで弾いてみても、さっきとは違ってうまく弾けない。おじさんはおじさんで別のヴァイオリンをギターのピックで弾いていたのだけど、いくらその手つきを見てもどうやって弾いているのかがどうしても分からなかった。
「実は弾きたい曲があるんです。ヴィヴァルディの四季なんですが、あれって技巧的には難しい方なのでしょうか」
「そうだね。ちょっと難しいね。……どれ、あそこにあるからとってきなさい」
おじさんが指す方へ歩いていくと楽譜が並んでいた。でも字がハッキリ読めなくて、全部ドイツ語かなにかに見えた。「そこじゃない、もっと奥」などと背後からおじさんの声が聞こえてくるのだけど、文字が読めないからどれが「四季」なのか分からない。うろうろしてばかりで一向に持ってこないことにしびれを切らしたのか、結局おじさんが重い腰を上げて自分で棚から一冊抜き取った。
いざ、おじさんが弾こうとするタイミングで、それまでずっと傍らで見ていた母親が先に帰ると言い出した。車を使われるとぼくの帰る手段がなくなるし、まだ帰りたくないと思っていたので抗議しようとしたら目が覚めてしまった。
夢のあと
いま考えると気がつけるポイントはいくらかあったのだけど、夢のなかではまったく夢だという意識がなく、目が覚めてびっくりしたくらいだった。明晰夢までまだまだなのかなあ。