偽物の夜

 今日は仕事をさっさと終わらせてプラネタリウムバーに行くつもりだった。気分転換にでもなればいいかと思ったからだ。暗闇とすこしの光がぼくのくだらないエゴを霧消してくれると思ったのだ。

「おまえは光を目撃するだけの視覚であり、それ以外の何物でもない」と、プラネタリウムは言ってくれる。
「見えないものは信じなくてよい。責任も約束もお前には見えない。社会も関係も見えない。過去も未来も見えない。時間はすべて見えない。それでよい」プラネタリウムは言ってくれる。

 そしてぼくは暗闇にすこし重荷を預けて再び光の世界に舞い戻る。太陽はもう沈んだのだからそれは偽物の光だ。偽物の夜から偽物の光のもとへ還るのだ。

 しかし行かなかったのは仕事が終わらなかったからではなくて、たんに面倒になったからなのであった。

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