20190123小野祐次個展「Vice Versa ‒ Les Tableaux 逆も真なり−絵画頌」

2019/1/23(水)に六本木ShugoArtsにて小野裕次の個展「Vice Versa ‒ Les Tableaux 逆も真なり−絵画頌」*1を見た。

展示されているのは、絵画を自然光の下で撮影するという手法で作られたタブローシリーズだ*2。自然光ということで、室内においては現代の人工的な光よりも弱いものなのだろう。色はもはや見えない。ここでは明度だけが、区別できる差異となって残されている。絵の暗部はほとんどすべてが埋没していて何も識別できない。では、そこからは何も受け取ることができないのだろうか。とんでもない。むしろその暗色の深みこそがこの作品群における圧倒的な迫力を担保している。単純な印象を述べるとすれば、絵画に宿らされた生命が剥き出しになっているように感じられた。絵画が表現していたはずのものは背景あるいは前提条件として姿を隠していた。何かを表現する手段としての絵画ではなく、絵画そのものの生命を小野裕次は写真に写し取ってしまった。それは忘れ去られた部屋で発見された子供のようにぼくの前に現れた。入れ替わり立ち替わり多くの人間がその前に立ちながら誰にも見つけてもらえない不可視の子供は、訪れる人間の姿を長い間じっと見つめていたに違いない。

Tableauxシリーズ ステイトメント

*1:

2018.12.12 Wed - 2019.2.2 Sat
shugoarts.com

*2:

タブローシリーズは、ルネサンスから印象派までの絵画を被写体に、美術館に注ぎ込む自然光や微かな明るさの元で、「可能な限り時間を遡り、当時の画家たちと同じ条件に身を置いて」撮影することを徹底して行っています。

Vice Versa ‒ Les Tableaux 逆も真なり−絵画頌 – ShugoArts