アイドルは大衆のおもちゃだ『ヘルタースケルター』

映画『ヘルタースケルター』公式サイト

「もとのままのもんは目ん玉と爪と耳とアソコぐらい。あとは全部つくりもん」のトップスターりりこの栄華とその終焉を描く映画。

 原作は岡崎京子さんの漫画で、3、4年前くらいに読んで多大なショックを受けた。蝕まれていくりりこのどうしようもなさがすごく伝わってきた。スピード感もあって時間を忘れて読んでしまうほど面白かった。

 映画はというと、蜷川実花さんが監督をしているだけあって演出が素晴らしく綺麗。ピンクを基調としたスイートな色合いでゴージャスな映像は目を見張るものがあった。写真としてじっくり眺めても飽きなさそうな華やかさだ。しかしそのためにストーリーがぼやけていたり原作のスピード感が犠牲になっていた。りりこの最後の舞台である記者会見でさえ映像の綺麗さが重視され事態のショッキングさがあっさり流されていたように感じた。原作が名作であったがゆえにその良さが損なわれているのは残念に思う。(もし原作が凡作だったならこの映画に文句を付けることなどきっとできなかった。)

 非常に失礼なことにぼくは今まで沢尻エリカ様の美しさに気づいていなかったのだけれど、この映画ではその美貌が遺憾なく発揮されていて感心した。最後のシーンでこずえが見たりりこの妖しさはむしろ作中一番の美しさだった。また、りりこが居た部屋の雰囲気、りりこの衣装や左目の過度なメイク等演出も素晴らしく好みでそこのシーンがこの映画の中で一番好きだ。

 蛇足になりますが、タイトルの「アイドル」は職業区分ではなく言葉本来の意味です。区分でいえばりりこはモデル。辞書を引用しておきます。

アイドル【idol】
1 偶像。
2 崇拝される人や物。
3 あこがれの的。熱狂的なファンをもつ人。「―歌手」
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