第三夜

状況

 お盆休みを経て、さらに生活リズムは悪化している。

 日曜の夜は一睡もできず貴重な一夜を無駄にしてしまった。月曜日は徹夜後だからすぐ眠れるだろうと思って早々に布団に潜ることにした。その企ては成功したのだけれどその先がどうもうまくいかない。眠くないわけではないしあくびも頻発するのだけれどさっぱり眠れない。やっと眠れてもすぐ目が覚める。眠った気がしない。それを二時過ぎくらいまでくり返しながらも朝を迎えた頃にはなぜかすっきりしていた。

 火曜の夜は今日こそ早く寝ようと考えていたがそれも叶わず、結果二時頃までは起きていた。昨日は昨日で夜に食欲が湧いてきてしまって就寝時間は結局また二時くらいだった。

 それでもなぜか夢を三つも思い出すことに成功した。思い出したのは珍しく起床直後ではなく、出勤して少し経ってからのことだった。

第一幕

 黒い虫が身体を這った。カブトムシくらいの大きさで部屋の中で目撃するには少しばかり大きい。這われる感覚が妙にリアルで身体がかゆくなった。一思いにつぶしてやれと思うのだけど、虫は図体が大きいわりに畳の目に難なく潜り込んであっという間に姿を隠すことができた。それを見届けて、次見つけたらやっつけてやると決心して夢の中で眠った。

第二幕

 ももクロが青山の通りでセットもなくライブをしていた。すごく近距離で見ることができたけれどもそんなに興奮しなかった。ももクロはなぜか歌いながら移動するので、ぼくも近距離のままついていった。ふとした拍子に後ろを見たら大勢の人だかりで、どうしてぼくがこんなに近くで見れているのか不思議に思った。

 ももクロの行く先がアトラクションめいてきた。もはやだれも歌っていない。いつしか水のないウォータースライダーの入り口のような場所にメンバーの誰かと立っていた。さっきまでとは比べ物にならないくらいの超至近距離。だけどそこまでくると目の前の人がももクロだということすら忘れていた。その距離で誰か分からないのはそのせい。起きてから思い出そうとしても顔が判然としない。夢自体もその次の瞬間で終わったのだと思う。一緒に滑ろうとしたところまでしか覚えていない。

第三幕

 ……。確かに思い出したのだけどすっかり忘れてしまった。頭の中を丁寧に探したのに跡形もなくなってしまった。