日記9:髭

髭が邪魔だ。毎朝出社する習慣が無くなった今となっては髭を剃るのも億劫になってしまった。別段濃い方でもないが一々剃るのは面倒だ。こんなものは寝て起きたらつるんと無くなっていたらよいのだ。一応寝る前にはそのように髭の神様にお祈りしているが一向に無くなる気配がない。あまり不躾な願いだから向こうで気を悪くしたのかもしれない。もしかしたら一本一本に名前なぞ与えて自分の子供のように思っているのかもしれない。であるならとんでもない馬鹿だ。祈るのも金輪際よそうと思う。世の中には他人の毛を抜いて生活している素晴らしい団体もあるようだが、そういうところは髭だけでなく金まで持っていくつもりなのでいまのところは遠慮している。大体望んでもないのになんで生えてくるのか。人の顔だぞ。苔でさえ気を使って避けてる。人の顔はどれだけ洗ってもなぜか美しくならないんだ。褒めるところがない人に向けた「清潔感を出せ」というアドバイスを聞いたことがあると思う。せめてそこだけでも空気を読んで顔面の環境保全にご協力願いたい。こちらの希望は充分伝わっていると思う。いままでも散々いらないとか邪魔だとか結構ダイレクトな精神攻撃を無意識レベルのテレパシーで断続的に与えている上に、もう何年も剃刀による物理攻撃まで加えている。それでも平気な顔をしている。どう考えても宿主より強いだろう。もう独り立ちしてもいいんじゃないか。皮膚もそう言ってる。たのむよ。