やぼよりましだ

かくなるうえは
とことん
うそぶくばかりだ
いばってもいい
くるってもいい
やぼよりましだ と
矢川澄子『行余りのソネット』より)

 最近は早く寝よう早く寝ようとそのことばかり思っているのだけれどこれが意外と難しい。目標としては20時就寝6時起床の10時間睡眠を平日でも週末でも天国でも地獄でも構わず断行するというところだが、ほらもう20時を回ってしまった。長時間睡眠はレム睡眠の時間を長くするらしいから明晰夢を見るのなら是非身につけたい習慣だ。機械みたいにスイッチひとつで暗転したらいいのにと思う。

 引用した矢川澄子の詩は『吟遊星』という同人誌に載っています。加藤郁乎特例号ということで、この詩も題の下に「——イクヤへ」と書いてある。これが泣けるのである。ソネット(=14行詩)の行余りだから全部で15行しかないけれど、たぶん全部載せてもぼくが泣ける理由は伝わらないから載せない。かといってその理由をここで解説するかというとそういうわけにもいかない。ぼくにもよく分かっていないからだ。ひとつだけ言えるのは、澁澤龍彦矢川澄子と加藤郁乎と『兎とよばれた女』と『後方見聞録』とを頭の中で混ぜこぜにして、そこにこれを持ってきたらそうなったということだけである。

 それにしてもいい詩だ。かくなるうえはとことんうそぶくばかりだ。矢川澄子は実際に加藤郁乎にこういうことを言われたのだろうか。「くるってもいい やぼよりましだ」なんて彼ならいかにも言いそうだ。