個人日誌2022/04/20

ここ最近は精神医学事典*1をちびちび読んでいる。書名では事典となっているが、エッセイ集と言った方が近い。今日は [結界] の項を読んだ。著者が、40過ぎの引きこもり男性の家を訪問した時の話だ。

その家ではコンロではガスの火が小さく燃えていて、あらゆる蛇口からは細く水が流れ続けていて、それが男性にとっての結界の役目を果たしていたらしい。彼は統合失調症で自分の家が何者かに狙われているという妄想を抱いているために、自分の聖域をそのような形で守っていたということだが、外から見ただけではそれが本人にとって結界の役目を果たしているようだということはわかっても、どうしてその形が結界として機能するのかはわからない。ぼくには目に見える聖域よりも、彼にしかわかりえないその象徴世界に興味がある。その世界に通ずる道があるなら実際に目にしたいと思っている。そういった世界の存在を仮定しなければ、この世のあらゆる具体的な事物に興味が持てそうにない。