個人日誌2021/01/02

散歩に出たら、足元に鳩の死骸がとつぜん発生した。気づいていなかったがずっとそこに落ちていたのだろう。驚いて一瞬とびのいてから、でも本物かなと思ってちょっと近づいて観察してみた。血はどこにもついていなかった。肢が変にねじれてるとかいうこともなかった。見た目上はぜんぜん問題なさそうで死因がよくわからない。なんなら精巧に作られた置物か何かじゃないのかと思ったけれど、どこか生物だった頃の残滓みたいな雰囲気だけは未だに残っていて、独特の存在感があった。覗き込むと目を全開にしている。漠然と何か嫌な感じがして、近くにずっといることはできなかった。

少し近寄っただけで触れてもいないし、変なにおいもしない。五感において受け取った情報は置物と変わりない。あの鳩にはそれ以外の感覚に訴えかける何かがあった。死者を「物になった」という表現を目にすることがあるが、無生物とは根本的なところでぜんぜん違うのだということを身をもって体験した。

しばらく歩いて比較的大きな公園に出た。そこには真剣にボールを追いかけている小学生たちや、水辺で足場に飛び乗りながら岸の間を往復する子供たち、池で水の中に顔を沈めながら脚をばたつかせる鴨たちなどがいた。

ぼくの存在感はむしろ死んだ鳩よりも弱っているだろうなと思った。