1419 不思議の国のアリス

古書店に50円で置いてあったのを見つけたので購入。ここ最近はぜんぜん本が読めなかったのでリハビリを兼ねて読んでみたところ、これがなかなか良かった。いろんな翻訳が出てると思うけど、これは「新しい世代が時代のずれによる抵抗を感ずることなく読めるようにと心がけた」と翻訳者のあとがきにあるように、子供にも楽しく読めるものになっていると思う。和田誠さんの挿絵も子供向けのやわらかいイラストで目に嬉しいものになっている。中でもチェシャ猫の絵が特に気に入った。丸々とした体で木にちょこんと掴まってる姿が人でも殺しそうなほどかわいげがある。

これほどの有名作なので内容はだいたい知っていたけど、このチェシャ猫の場面が一番和む。猫なしのにやにや笑いだけ残った場面には快哉を叫んだ。もうほとんどここを読みたくて読み始めたようなものだ。

他にも下記のような含蓄に富んだ言葉もあり、子供向けといって簡単に片付けられる作品ではなかった。

「だってそれはしかたがないさ」と猫はいいました。「ここに住んでるものはみんな気ちがいなんだから。おれも気ちがいだし、あんたも気ちがいさ」(P83)

「どうして、あんなに悲しんでいるの?」と、アリスがグリフォンに聞くと、グリフォンは、前とほとんど同じ調子で「ただの空想なんだよ、あれは。何も悲しいことなんかありゃしないんだ。さあ来いよ!」(P126)

 

<目次>
兎の穴に落ちる
涙の水たまり
コーカス・レースと長いお話
兎はビルを送りこむ
イモムシの忠告
豚とこしょう
気ちがいお茶会
女王のクローケー・グラウンド
亀まがいの物語
海老のスクウェア・ダンス
だれがパイを盗んだか?
アリスの証言

あとがき

<備考>
翻訳 福島正美
イラスト 和田誠
角川文庫50年8月30日初版発行。