個人日誌2021/02/09

現代詩手帖*1を読んだ。ある対談が収録されていて、それがひどく不愉快だった。いまの時代にこのたとえが通用するのか知らないが、深夜番組で面白かったのがやたら人気になってゴールデンに移動してつまらなくなった時のような感覚があった。隠キャのための文化が陽キャのためにつまらなくなったというか。資本主義的な視点でみれば、大衆性を帯びたとは決していえないほど惨めなものだけど、使う言葉が違うだけで考えてることは収益化に熱心なそこらのブロガーと変わらないように思えた。おまえらがやってるのは詩じゃなくてただの真似事でしかないんだから表に出てくるなよと思ったけど、前述のテレビのたとえに照らすと表に出てくる時点で終わってるんだろうなとも思える。そいつらの手首から肩までゆっくり丁寧に螺旋状に刃物を沿わせて血液が垂れてくる様子をそのまま本人に見せてこれがおまえらの本当にやるべきことだよと言ってやりたい。

*1:

現代詩手帖2021年2月号(雑誌)

現代詩手帖2021年2月号(雑誌)

  • 発売日: 2021/01/28
  • メディア: 雑誌
 

個人日誌2021/02/08

昨年から食事のタイミングでフルハウスを観ていた。全8シーズンを昨日ようやく観終わった。今日からその続編(フルハウスの29年後)であるフラーハウスを観始めた。フルハウスはまだぼくも子供だった頃に実家で目にしたことがあったけど、ちゃんと観ていたわけではなかった。それぞれのキャラクターは知っていたけど、エピソードはひとつも覚えていなかった。いろんなエピソードがあって、もちろん毎回クオリティが高かったというわけではないけれど、それでも一貫して魅力的なキャラクターを描けていたのがよかった。よくできたフィクションに於いては特に珍しい話でもないが、しばらく一緒に過ごしてきた仲間と離れるくらいの感情になった。

昨日最終回を観てお別れしたばかりなのに突然その人たちが歳をとって再登場したのだからちょっと奇妙な感覚を覚えた。学校を卒業した次の日に30年後の同窓会があるようなものだ。しかも自分だけが歳をとっていない。それくらい愛着があったとはいえるかもしれないが、その中には人間が歳をとることの悲哀もあって、たとえば三人のおじさんが初老になってしまった姿を見るのはほとんど悲しいことだった。子供たちもあっさり中年になって子供を持ったり仕事をしたりしていた。だれも大人にならないでくれという願いはどう頑張っても聞き届けられない。時間は見えない雪で、透明に積もりながらぼくらの気づかないところで確実に景色を変えていく。単なるライトなコメディだと思っていたけれど思いのほか感情が揺さぶられてしまった。

個人日誌2021/02/07

今日は朝から天気がよかった。コーヒーを飲みながら外をうろついて、最終的に駅前で日向ぼっこをした。気持ちよかった。

駅前にはいろいろな人が通った。音楽を流してダンスを披露するパフォーマー、父と娘くらいの年の差があるパパ活気味のカップル、ぼくと同じようにただ座り込んでいるじいさん、そして一見特徴もなく過ぎていく数多の市民。彼らにも同じように何らかの状況があって、何らかの好みがあって、不満とか嬉しさとかを感じながら通り過ぎていく。ぼくは彼らと何の関係も結ばない。何の価値づけもしない。ただ眺めている。

こうして時間を無駄にしていたら人生が豊かになった。無駄にしているように見えてこれは自分という一個の世界を豊穣にする手段だった。一時間足らずのこの時間に長い長い夏休みを幻視した。なにかを達成するよりも簡単に満足感を得られた。何もない時間、自我を空洞にする時間、それが豊かさを助長する。簡単なはずなのになかなかできないことだった。ねこ見習いになって数年が経つ。ぼくはまだまだだ。

日当たりのいい場所で時間を無駄にする会を不定期で開催していきたい。

個人日誌2021/02/06

先日ドラッグストアで買い物をしたら今週末まで使える割引券をもらった。250円分使えるからなにかお菓子でも買おうかなと思っていた。今日行った歯医者で「デンタルフロスを使っていきましょう」ということを言われたので、どうせ行くんならということでそれも一緒に買うことにした。デンタルフロス小林製薬の「糸ようじ」という商品が有名で、歯と歯の間に糸をねじ込んで無理やり汚れを取るという野蛮な道具なのだけど、いままで自分が使うことを想定していなかったのでどういう観点で選べばいいのか見当もつかなかった。ハムレットか良牙かくらいの感じで散々悩んだ末に「売り上げNo.1」みたいなことがパッケージに書いてある商品を選んだ。当初の予定だったお菓子も見たけど、どれもパッとしなかったからお菓子はやめることにした。そこのドラッグストアではレジ前で余計な対応がいつも入る。アプリでバーコードを読み込んでもらうとか、読み込んでもらったらアプリを操作して別のバーコードを読み込んでもらうとか、「袋いりますか」「いりません」のやりとりをするとか。そうこうしている内に割引券の存在を失念したようで、せっかく買ったのに割引券を使わずに出てきた。その足でシーシャ屋に入り、シーシャを吸いつつ『全員くたばれ!大学生*1』とかいう、浮かれた大学生の頭上から自分たちの尿を撒き散らそうとする美しい青春漫画を読みながら興奮して「自意識の病……これはドストエフスキーだ!地下室の手記だ!」などと口走った辺りで、割引券を使わなかったことに気づいた。薄暗いシーシャ屋を出ると、まだ沈み始めたばかりの太陽が眩しかった。出てすぐのところにメイドが看板を持って暇そうに立っていた。そこを通り過ぎる瞬間、メイドにはおよそ似つかわしくもない威厳のある声が「おまえも早く大学生になって無闇にマウントを取りなさい」と言ったのが聞こえたような気がした。

個人日誌2021/02/05

最近シーシャがうまく作れないと思っていたが、ミックスがおかしかったようだ。

キャラメルのフレーバーを買ってからずっとキャラメルバニラミルクをやっていた。失敗続きだったから昨日はぜんぜん違うミックスを作ってみた。それはうまくいった。

この場合のうまく作れないってのは味が薄く感じるってことなので、ミックスの比率じゃなくて火加減が悪いのかなと思っていたのだけど、昨日も火加減は同じだったのでそのせいではなかったということがわかった。それで今日は比率を変えてみた。バニラ6:キャラメル4:ミルク2をバニラ8:キャラメル4(:ミルクなし)にした。バニラ6:キャラメル2:ミルク2にしようかとも思ったけど、失敗したら次それをやることにして、今日はとりあえずミルクなしでやってみた。結果うまくいった。万全ではないがそれなりに満足できる出来になった。フレーバーごとに煙の出る量とか味の濃さとかが違うし、同じ味でもメーカーごとにまた違うので(なんなら製造ロットによって変わる場合もあるようだがそれは製品としては単なる不良品なので気にしない)、それぞれの性質を理解して微調整しないとうまくいかないということを改めて感じた。正直バニラ6:ミルク2+何か4が黄金比だと思っていたのだが甘かった。

チョコレートとかで作った時はもっと濃くできたので目指すのはそれなんだけど、キャラメルだとこれ以上は出せないということなのかもしれないなあなどと思った。

後学のために使用したフレーバーの詳細を残しておく。*1

  • バニラ:Fumari フレンチバニラ
  • キャラメル:SocialSmoke ドゥルセデレチェ
  • ミルク:(Debaj ミルク)

*1:いくつか試したけどバニラとミルクはこれが一番だった。甘いのが好きだからこの二つに何かを混ぜることが多い。

個人日誌2021/02/04

昨日に引き続きユリイカを読んだ。東京03の飯塚という人と坂元裕二が対談していた。その冒頭になんの断りもなく東京03のコントの台本が3本載っていて、なんだこれ唐突に始まったけど坂元裕二の脚本なのか?などと思いながら読んでいたら、内容が普通に面白くて笑ってしまった。*1台本が終わって対談が始まったところでなんとなくコントの台本だったのだと気づいた。対談の内容が結構まじめな創作論が語られていて参考になった。10分くらいのコントだと3人がちょうど良くてドラマになると4人が一番書きやすいとか、「大きいストーリー」と「人間の面白さ」はぶつかってしまうとかそういう話をしていた。「大きいストーリー」というのはドラマでいえば1話目から最終話までの筋のことで、「人間の面白さ」は日常的なディテールのこと。坂元いわくストーリーに重きを置くと人間の細かい面白さが描けなくなるし、逆に人間のディテールを描こうとするとストーリーが止まってしまうという葛藤があるらしい。そういう風に言われたらそうかもなと思ったけど、ぼくが坂元作品で唯一観たことのある『カルテット』*2はどっちも充分に描けていた。そういう視点に自覚的になっているだけあってバランスが取れているんだなあと思った。

最近は寝る前に少しずつ『象徴主義の文学運動』*3を読み進めている。今日は朝から調子がよくなかったので、業務が終わり次第それを読むだけにしてさっさと寝ようと思っていたが、なんだかんだやっていたらもう23時を回ってしまった。

*1:特に3本目の「お願いがございまして」が好きだった。カフェでの会話劇だった。移植手術を引き受けて欲しいというまじめな話をしていたら隣の席に客が座ったのだが、その客がおかしな会話をしていて、それがまじめな話に侵食してくるという話。

*2:

*3:

個人日誌2021/02/03

緊急事態宣言が延長された。それに合わせてぼくの在宅勤務も延長された。

今日もユリイカ*1を読んだ。ユリイカは毎回なんらかの文化にスポットを当てて特集を組んでいる。漫画家とか映画監督とかそういった創作者が多いように思うが、その特集の周辺にいる人物から寄稿された文章で成り立っている。ユリイカは面白いときは本当に面白い。これはテーマ自体の良し悪しというよりも寄稿した人の熱量次第という感じがする。今回は脚本家の坂元裕二が特集されていた。テレビドラマが彼の主な活動であり、テレビ嫌いのぼくはほとんど彼の作品には触れていなかった。一作だけ観たことがあったが、逆に言えばそれくらいしか彼のことを知らなかった。そういうほとんど前知識がない状態で読んだのにかなり面白く読めている。前回これだけ面白く読めたのは、濱口竜介を特集した号*2だった。濱口竜介はその頃『寝ても覚めても』が公開されるということで特集が組まれていたように記憶しているが、それが公開されていることもそれ以前にどんな活動をしていたのかも何も知らずに読んで、興味を持った。それでちょうど濱口竜介をフィーチャーした上映会を都内の映画館でやっていたので『ハッピーアワー』を観た。5時間以上もある作品だったが、ぜんぜん飽きずに観ることができた。これは2時間の映画でも飽きるぼくからしたら信じられないことだった。しかも役者は全員素人だ。ユリイカにも書いてあったのでそれを前提に観にいったのだけど、知らずに観ていても素人だとわかるくらいの演技だった。それでも面白く観れたのだからこれは監督の力が大きかったのだろう。その流れで『寝ても覚めても』も観た。これも面白かった。こういった経験があるので、坂元裕二作品にも自然と期待してしまう。Huluでいくつか配信があるので、いずれ観るつもりでいる。